風呂敷で包んだ洗面器のなか
石けん箱はカタカタ鳴った
洗いたての髪が
夜風に吹かれてひんやりとした
湯気のにおいがまだ残っている
銭湯の帰り道
母はひたすら黙って歩く
ついてゆくわたしは少し早足
硬い沈黙
夜空には煌々と月
「お月さんが一緒に歩いてる」
磁石に吸い付けられるように
そう思った
砂利道に生えた黒い木製の電柱は
隣までの距離がやけに長い
明かりと明かりの間にはさまれた空間は
夜の空より暗い気がした
どこかで犬がけたたましく吠えた
「手を・・・」
飲み込んだ言葉が白い息になる
そのとき母は
つめたくて明るい月だった
けして追いつくことのない
月だった


2005.1.1

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